特集

日本医科大学の学生支援

未来の医療を担う医学生の
学びや学生生活を豊かなものに

日本医科大学は、済生学舎として1876年に創立された日本最古の私立医科大学です。医学部では、基礎的な医学知識から最先端のロボット工学やAI技術まで幅広く学ぶとともに、豊かな人間性を育む教育を実践しています。医学部の6年間は学ぶべき科目や実習が多く各種試験に向けた対策などに追われることになりますが、より良い学生生活を送るためのサポート体制が充実していることも特徴のひとつです。学習面から生活面まで幅広く支援する学生部長の石井庸介先生に、学生部としての支援体制や本学独自の学生サポート制度などを紹介してもらいます。

勉強からクラブ活動まで
学生生活全般をサポート

―日本医科大学医学部では、どのような教育を行っているのでしょうか。

日本医科大学医学部は、「愛と研究心を有する質の高い医師と医学者の育成」という教育理念のもと、創立以来約150年にわたって受け継がれてきた伝統を守りながら、より良い医学教育のために新たな仕組みや最先端技術を導入し続けています。

  • 一方で、AIが医療を担うようになってきた現代において、これまで以上に大切になるのが人間性です。患者さんのデータやガイドラインを入力すれば、AIでも高度な判断をできるようになるでしょう。そうなったときに私たち人間はAIが出す“正解”に加え、患者さんの背景や人柄、人生観を加味し、哲学や倫理性を踏まえた選択をする必要があります。本学は知識や技術だけでなく、人間性や人間力といったものを育む場でもあります。

  • 日本医科大学の建学の精神・学是・教育理念

―学生部は何をする組織ですか。

医学部の学生は学ぶことが非常に多いことに加えて、臨床実習や研究などもあり、とても多忙です。ともすれば学業や実習で忙殺されてしまいますが、将来医師として懐の広い仕事をしていくには学生生活を楽しむこともとても大切なことだと考えています。そういった学習面から生活面まで含めて、充実した学生生活を送ることができるようにサポートすることが学生部の仕事です。

―どのようにサポートしていますか。

1学年から6学年の約750名の全医学部生を対象に、入学直後から卒業までの勉強、クラブ活動、メンタル面までサポートしています。具体的には、新入生へのオリエンテーションの実施、各学年の試験・勉強の指導、個別生活指導、人間関係や生活上の悩み相談、心身の健康管理、進路・就活援助、奨学金・国民年金や傷害保険の紹介などが医学部学則で定められています。

学生アドバイザー制度など
6年間を通じた支援制度が充実

―「学生アドバイザー制度」とはどのような制度ですか。

本学はクラブ活動が盛んで、運動部や文化部での縦のつながりがとても強固です。クラブに所属していない学生やクラブ活動以外でも、上級生や医師・教員との縦のつながりをより親密にすることを目的につくられたものが学生アドバイザー制度です。

第1学年から第6学年までを2、3名ずつで縦割りに班分けして、上級生、下級生といつでも相談しやすいグループを作成しています。各班には学生教育を行っている医師や教員も配置されていて、教員の立場でアドバイスをします。教員は卒後何十年も経っていますので医師になってからの遠い将来について話しがちです。近い将来や学習内容に関しては、学生同士や先輩の研修医が今の学生生活や卒業後の進路相談、勉強方法などを直接話すことができることに価値があると思っています。

―「学年担任制度」や「チューター制度」についても教えてください。

各学年に1名の担任と2名の副担任がついて、学習・生活支援を行うのが担任制度です。学生部と担任・副担任は学生の出席や学習の状況を確認しながら、必要に応じて面談を実施し、試験や進級、就活について相談に応じています。担任・副担任は年に1回保護者との個別面談も行い、生活面での相談など直接話す機会を設けています。

チューター制度は第6学年を対象としたもので、成績に不安のある学生をマンツーマンで支援するものです。第6学年の卒業試験や医師国家試験などで合格できるように、二人三脚で声がけをして、勉強方法のアドバイスをします。

―ほかに独自の制度はありますか。

第3学年では、成績優秀な学生は授業に出席しなくてもeラーニングで履修できる制度があります。授業に出席しないことで空いた時間は、留学の準備や英語の勉強などほかのことに使えるようになります。さらに、研究配属という、研究室に配属されて集中的に研究に取り組む期間も設けています。

従来の授業は画一的で、100人いれば100人が全員同じ授業を受けましたが、特に座学については習熟度に応じて学び方が違ってもいいはずです。このような多様な学び方を実践することで、個々の学生のさらなる成長を促したいと考えています。

経済的支援のための
複数の奨学金制度

―経済的支援はありますか。

日本医科大学奨学金、父母会奨学金のほか、日本医科大学特別学資ローン、特待生学納金制度、学費の分納・延納制度があります。また、クラブ活動を中心とした学生の課外活動への資金援助も行っています。

―学業以外の活動はどうですか。

本学には、学生により自主的に管理運営されている学友会という自治会組織があり、さらに学友会の下では運動部25団体、文化部13団体が活動しています。先にも話したとおり、本学はクラブ活動に熱心な学生が多く、クラブ活動で先輩後輩や仲間たちと出会い、人間関係を築いていきます。ここで築かれた人間関係は、卒業後それぞれに医師として働くようになってからも続き、お互いに助け合う関係です。

―保護者の方々が大学と関わる機会もあるのでしょうか。

医学系大学の中には、親族や親が医師という学生が多い大学もありますが、本学はそのような学生は3割程度とそれほど多くありません。医学部は他学部とは異なることもたくさんありますし、6年間でのスケジュールや学習内容などがわからずに保護者の方が不安に感じることもあると思います。そのため、学生部から保護者の方に向けて情報発信するように意識しています。保護者の方々からも大学や学生生活にも関心を寄せていただき、応援してもらえるとありがたいです。

学友との出会いが財産
医師になってからも続く関係

―石井先生は卒業生ですが、どんな学生時代でしたか。

医学部で過ごした6年間は硬式野球部に所属していて、野球漬けの毎日でした。今思うと、よくそれで留年することなく卒業して医師になれたと思うほどです(笑)。その頃に心身共に鍛えられたお陰で、今こうして心臓血管外科医として、タフな仕事でもがんばれているのだと感じています。また、野球部の仲間は一生の仲間であり、強い絆で結ばれています。

  • ―学生部長としてのやりがい、今後への課題を教えてください。

    日々学生たちと関わっていると、学生たちは宝であり、磨けば誰でも光ると感じることが多々あります。今はまだ原石の学生たちが10年先、20年先どうなっていくのかがとても楽しみになりました。だからこそ最初が肝心ですし、将来の日本の医療を担う彼らが知識だけでなく医師としての考え方をしっかり身につけられる場にしていかなければいけません。その責任を痛感しています。

    学生部長としては、今やっていることが学生たちのためになっているかどうかを常に意識しています。大学で学んだことや学生部としてサポートしたことが役立ち、それぞれが花開くのは、医師になって何年も経ってからのことでしょう。そんな未来を想像しながら、素晴らしい医師を育てるためにすべきことを考え続けていきます。

    ―最後に、本学を志望する高校生や保護者にメッセージをお願いします。

    本学は在校生、卒業生のみなの仲がいいことが一番の特徴です。クラブ活動などの縦のつながりも、同級生の横のつながりも強く、みんなが助け合う風土があります。“日本医大らしさ”と言ってよいでしょう。その関係性は医師になってからもずっと続きます。医学部は医学を勉強するだけの場所ではありませんから、将来にわたって医師として素晴らしい仕事をしていくためにも、日本医科大学という良い環境で医学も人間性も学んでもらえればと思います。

  • 学生アドバイザー制度の目的

    • アドバイザーによる学生生活全般に関する指導及び助言。
    • 学年を越えた学生間の交流を深める。
    • 新入生、医学生の生の声を聞き教育に反映する。
    • 医学生のモチベーションを維持し勉学、クラブ活動、学生生活に対する意欲を高める。

    学生アドバイザーのグループは6年間同じで持ち上がり制のため一体感が生まれる

    アドバイザーが中心となって全員が集まれる日程を設けて、年間2回の懇親会を実施する

石井 庸介先生

石井 庸介先生(いしい・ようすけ)

日本医科大学医学部卒業。同大学第二外科(胸部外科)に入局。海老名総合病院、榊原記念病院での研修を経て、2002年から米国ミズーリ州セントルイス、ワシントン大学に留学。帰国後は日本医科大学千葉北総病院心臓血管外科、付属病院心臓血管外科で勤務。2020年より大学院教授、付属病院 副院長・医療安全管理部長。教育面では、学生部副部長、医学教育センター副センター長、卒後教育委員長を経て、2023年10月より日本医科大学学生部長を務める。

石井先生の学生への想い

臨床現場を知るほどに基礎科学や基礎医学の重要性を感じるはず
医師となる将来を見据えた勉強をしながら、学生生活を満喫してほしい

医学部では、基礎科学や基礎医学、臨床医学について学び、膨大な知識を身につけなければなりません。それはかなり大変なことですが、臨床研修などで患者さんと直接接するようになるほど基礎科学や基礎医学の重要性がわかってくるはずです。しかも臨床には医療工学も関わってきます。したがって、単に試験に合格するための勉強ではなく、数年後には医師となるという明確な目標を持って『将来を見据えた勉強』をしてほしいと願っています。また、人間性を高めるように6年間しかない学生生活を存分に満喫してください。そのことが『日本医科大学らしさ』を作ってゆくのだと思います。

PAGE TOPへ