One Team!
多摩永山病院 NSTチーム
栄養管理により全身状態やQOLの向上にも貢献
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総合診療科部長 医師
小原 俊彦先生(おはら・としひこ)
総合内科専門医、循環器専門医、日本プライマリケア連合学会認定医
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栄養科
高橋 美香さん(たかはし・みか)
管理栄養士、NST専門療法士
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看護部
藤本 幸江さん(ふじもと・ゆきえ)
NST専門療法士
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看護部
石森 愛弓さん(いしもり・あゆみ)
摂食・嚥下障害看護認定看護師
患者さんの栄養状態に応じて栄養を管理
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―NSTとはどのようなことをするチームですか。
小原:NSTとは「Nutrition Support Team」の略で、栄養状態に問題がある患者さんに対して、適切な栄養管理をするための多職種連携チームです。栄養状態の改善は疾患や褥瘡(じょくそう)の治療効果、合併症の予防に影響するだけでなく、QOLを高め、在院日数を短くして医療費の削減にもつながります。
高橋:NSTは患者さんの血液データや食事摂取量、摂取カロリーなどの栄養状態に基づいてプレゼンテーションを行って問題点を抽出し、それぞれの専門的な立場から意見を出し合います。さらに病棟の回診で患者さんの体を観察した上で、全員で改善点や問題点などを検討しながら栄養評価をします。
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NSTチームのメンバー。後列左から看護師の石森さん、藤本さん、薬剤師の榎本さん、大窪さん。前列左から栄養士の高橋さん、医師の小原先生、津久井先生
―それぞれの職種の役割を教えてください。
藤本:患者さんの一番近くにいる看護師は多くの情報を得ているので、情報をチームと共有し、栄養管理の早期対応を行います。チーム以外の看護師から「最近患者さんが食べられていない」などの相談を受けることも多く、その場でできることであれば対応しますし、必要に応じてNSTで関わります。
高橋:栄養士は食事の形態や栄養の投与方法、摂取の状態に関しての提案を行います。
小原:医師は、患者さんの病気や全身状態、現在行われている治療をもとに助言を行います。薬剤師は点滴の処方確認やそのときの栄養に合わせた薬剤の相互作用、輸液類の情報提供、食欲に関係する薬剤などの確認をしますし、摂食嚥下機能のリハビリを行う言語聴覚士や理学療法士もNSTには欠かせないメンバーです。
NSTが中心となり病院全体の意識を高める
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―多摩永山病院のNSTチームの特徴は何ですか。
小原:この病院は高齢者が多いので、食事だけでなく、フレイル(虚弱)や褥瘡など全身状態の改善が必要になります。また、がん拠点病院であるため、がん患者さんの退院後を見据えた栄養状態の改善などにも積極的に取り組んでいます。
石森:中規模病院なこともあり、スタッフ間の距離が近く、いつでもすぐに連携できるのが多摩永山病院の良さの一つです。褥瘡管理についても、NSTと褥瘡チームが連携して進めています。
高橋:やはり多職種での連携が強みです。一人では限られた範囲でしか関わることができませんが、多職種で情報を共有しながら包括的に管理することで良い連携ができています。
―今後に向けた課題や展望をお聞かせください。
小原:まだNSTの恩恵を受けられていない患者さんが多数いますので、より多くの患者さんの栄養サポートができるように体制を整えていきます。加えて、NST以外の医療者たちもNSTと関わりを持つことでNST的な知識が増えて意識が変わるので、病院全体として栄養管理のレベルを高めていきます。